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研究内容

    多様な構造・機能をもつ動物の臓器や、体表の美しい紋様はどのようにして形成されるのでしょうか。細胞が定められた秩序に従って配列し、機能的な臓器や紋様が形づくられていく過程には、細胞・組織間相互作用が必要不可欠です。我々の目標は、これらの『形態』の変化に注目し、臓器の発生・分化メカニズムを分子レベルで明らかにすることにあります。
    具体的には、種々の遺伝子ノックアウトマウスを用いたマウス肝臓の発生・分化・再生系の解析や、ウズラの羽毛芽列の紋様形成の解析を主な研究対象として、発生生物学を基礎とした組織形態学的解析や、in vitro 細胞培養系を用いた細胞生物学的解析により、肝臓の形成・再生メカニズムや羽毛芽列の紋様形成メカニズムの解明を目指しています。
    肝臓形成に異常を起こす遺伝子ノックアウトマウスの解析により得られる研究成果は、肝臓の形成・再生メカニズムを明らかにすることにとどまらず、遺伝子疾患の発症メカニズムの解明にも役立つと考えられ、医学領域への応用も期待されます。

塩尻研究室

1. 遺伝子改変マウスを用いた肝臓形成・再生メカニズムの解明  

   

    当研究室で維持している肝臓形成に異常を示す遺伝子ノックアウトマウスを材料とし、組織形態学・分子生物学的解析を通して、肝臓の発生・分化・再生メカニズムの解明を目指します。得られた成果を遺伝子疾患の発症メカニズムの解明に繋げ、基礎研究を医学的応用に拡張することを目的としています。

・Hhex コンディショナルノックアウトマウス (多発性肝嚢胞症発症マウス)

野生型マウスおよびHhex コンディショナルノックアウトマウスの肝組織のH-E染色標本

 

【出生直後】

    野生型では実質側が肝細胞や造血細胞により満たされているが、Hhex cKOでは肝細胞で構成された管腔構造が複数存在する。

【成体】

    野生型では、肝葉先端部は成熟化した肝細胞により構成されているが、Hhex cKOでは嚢胞の形成が観察され、成長・老化とともに肥大化していく。

 ・C/EBPa ノックアウトマウス (肝細胞胆管上皮細胞様化マウス)

胎齢17.5日の野生型マウスおよびC/EBPa ノックアウトマウスのサイトケラチンの免疫組織化学

 

    野生型では、門脈周囲にサイトケラチン陽性の拡張した胆管が観察される。C/EBPa KOでは、肝実質部において肝細胞の成熟化がみられず、サイトケラチン陽性の胆管様管腔構造が多数観察され、異常な組織形態を示す。

・Inversin ノックアウトマウス (内臓逆位マウス)

Inversin ノックアウトマウスと野生型マウス

 

    Inversin ノックアウトマウスでは、内臓逆位に加え、胆管形態形成異常を示し、黄疸を呈する。成長も不良である。

・Tnfr1 ノックアウトマウス (肝再生不全マウス) 

70% 肝部分切除48時間後の肝組織のH-E染色標本 (左: 野生型、右: Tnfr1 KO)

 

    野生型と比較し、Tnfr1 KOでは、細胞増殖期にある細胞 (黒丸で示した) の数が少なく、肝再生不全がみられる。

 

 

2. マウス胎仔肝臓初代培養系を用いた肝細胞分化メカニズムの解明

 

    細胞レベルにおける肝臓の発生・分化メカニズムを解明するために、マウス胎仔肝臓初代培養を用いた解析も行っています。胎仔期の肝臓は、肝細胞と胆管上皮細胞への二分化能をもつ肝幹細胞 (肝芽細胞) に加え、血管内皮細胞、肝星細胞 (繊維芽細胞の一種)、クッパ―細胞 (マクロファージの一種) など種々の非実質細胞から構成されています。肝細胞の成熟化には、非実質細胞との細胞間相互作用が重要であると考えられ、当研究室では肝芽細胞、血管内皮細胞を細胞分離する技術を用いて、各細胞間の相互作用の解明を目指しています。

MACS (磁気細胞分離) 法を用いた胎齢12.5日肝臓の肝芽細胞除去・再構成培養

 

【クルード画分】 肝芽細胞、非実質細胞を含む粗製の初代培養肝細胞画分

【肝芽細胞画分】 E-カドヘリン抗体を用いたMACS法により単離精製された肝芽細胞のみを含む細胞画分

【非実質細胞画分】 肝芽細胞画分を除いた血管内皮細胞、クッパー細胞、肝星細胞などの非実質細胞を含む細胞画分

【再構成画分】 MACS法により単離された肝芽細胞画分および非実質細胞画分を再混合した細胞画分

  

3. ウズラの羽毛芽列の紋様形成メカニズムの解明

 

   ウズラの背中にみられる羽毛芽列は黒色と黄色からなる美しい紋様を形成します。動物の体表を彩る美しいパターンがどのようにして形づくられるのか発生生物学的観点から非常に興味深く、理学的視点により、この紋様形成メカニズムの解明を目指しています。

ウズラ10日胚背部の紋様

 

正中線に沿い、短い羽毛芽列が観察され、

その両側にほぼ黒色の羽毛芽列が1列、

続いて黒色と黄色が明瞭に分かれている

羽毛芽列が1列、さらにほぼ黄色からなる

羽毛芽列が2列観察される。

【主な研究テーマ】

● 肝臓特異的Hhex遺伝子欠失マウスを用いた胆管形成および肝嚢胞発生メカニズムの解析

● マウス肝臓発生・組織構築過程における肝特異的転写因子C/EBPaの役割

● Inversin 欠損マウスを用いた肝臓形成メカニズムの発生遺伝学的解析

● Tnfr1 欠損マウスを用いた肝再生メカニズムの解析

● マウス胎仔肝臓の組織構築等における原始類洞内皮細胞を中心とした細胞間相互作用ネットワークに関する研究

● マウス肝内血管系の発生における細胞間相互作用に関する研究- in vitroでの血管構築に対する肝芽細胞の作用-

● ウズラ羽毛芽色素パターン形成メカニズムに関する発生生物学的研究

● 比較分子形態学的手法による脊椎動物における肝臓構築の多様性と構築メカニズムの解明

肝臓構築過程における細胞間相互作用ネットワーク解析

● マウス胎仔肝星細胞における温度感応性ゲル誘導性細胞死の解析

● マウス胎生期臓側卵黄嚢の分化多能性の評価および肝臓誘導モデルの構築に向けた解析

小池研究室

 掲載準備中です。しばらくお待ちください。

 

 

【研究テーマ】

● 肝再生・癌化過程における肝前駆細胞の細胞系譜とPdx1遺伝子の役割の解析

● 内胚葉上皮組織におけるPlp2の発現及び機能解析

● 消化管の発生における組織間相互作用機構に関する研究

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